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民藝を楽しむ
金光
章
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著 出版社:吉備人出版 1,260円(税込価格)
ISBN
:978-4-86069-261-2 刊行日:2010年6月
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おりしも民藝ブームということもあり、マガジンハウスから「BRUTUS」の2010年7月15日号「民芸とみやげもん」の特集や、尾久彰三さんの「観じる民藝」(世界文化社刊)、「月刊 目の眼」7月号別冊の「サヨナラ、民芸。こんにちは民藝」(里文出版刊)など、美術書コーナーには民藝に関する本が増えてきています。 私の中の民藝熱は高まるばかりで、先日やっと念願だった東京・駒場にある日本民藝館にはじめて行ってきました。 猛暑の中、電車を乗り継いでたどりついた日本民藝館の佇まいは、
木造瓦葺のドッシリした建物の玄関に
簾が掛かった様子は涼しげで、そこだけが静寂な空気に包まれていました。 中に入れば何度も本で見た、2階に上がる階段が両サイドにある真ん中が吹き抜けになった空間を中心に展示室があり、作品が見やすく配置されていました。
民藝運動の創始者で、この日本民藝館の初代館長である柳宗悦の「陳列はそれ自身一つの技藝であり創作であつて,出来得るなら民藝館全体が一つの作物となるやうに育てたいと思ふ」という「民藝館を親しく温かい場所」にという想いが、実際この日本民藝館に訪れたことでよく理解することができ、非常に感激しました。 現在「日本の染-絞り・型・筒描-」の特別展を9月5日までおこなっており、日常使いであった夜具地や幕などに用いられた筒描染や型染を、柳宗悦の装案によって掛軸や屏風に仕立てあげられた作品などが展示してありました。16世紀の絞り染「三蓋菱紋旗指物」や、鹿革に絞り染をした羽織、沖縄の美しい色彩を施した紅型など、「染物の国・日本」を知る見ごたえのある内容に堪能、そして柳宗悦の集めた民藝品の数々をまじかで見ることができ、初・日本民藝館に大満足して帰ってきました。
さて今回ご紹介する本、吉備人出版刊「民藝を楽しむ」は、民藝に興味を持った初心者の方にもわかりやすい1冊です。著者の金光章さんは、岡山で建築士をされており、倉敷民藝館の改築された際、設計の一部を担当した縁で民藝に深く親しむようになりました。 現在、金光章さんは日本民藝協会専務理事をされており、日本民藝協会機関雑誌「民藝」に連載された「民藝つれづれ草」に綴った「民藝」の精神をときほぐす21話をまとめ、「民藝を楽しむ」は生まれました。 以前、金光氏は同じ吉備人出版から、倉敷の民芸を支えた人たちの果たした役割やその思いを分かりやすく描いた「民藝とくらしき」も出版されていますが、この「民藝を楽しむ」の中でも「岡山県と民藝」について書いています。 昭和11年、東京駒場の日本民藝館設立に多大な貢献あった大原孫三郎は岡山県・倉敷の人で、経済活動で高い実績を残しながら、民藝と郷土に深い理解を示し、柳宗悦と工芸振興を通して交流を深めていました。 大原孫三郎といえば、日本で最初の西洋美術館である大原美術館を設立、その人となりは、城山三郎著の「わしの眼は十年先が見える―大原孫三郎の生涯」(新潮文庫刊)を読めば理解することが出来ます。
「大原家の財産はすべて神のため、社会のために使われるべき」という考えをもっていた孫三郎は、社会
、文化、福祉と多分野にわたって貢献した業績は素晴らしいもので、その考えを引き継いだ後継者・總一郎とともに倉敷民藝館の設立にも大きく貢献しました。 このような土壌のもと、カリスマ性のある外村吉之介・初代倉敷民藝館館長や、杉岡泰社長率いる岡山県民藝振興会社が、実際面での郷土の民藝文化を飛躍的に向上させてことは、民藝運動の成果であり、結果として文化面の成熟の高い街として倉敷は全国から注目されていると金光氏はまとめています。 民藝の「日常の生活の中に美を見出す」という考えを大切にし、物と心が一つになった健康的な暮らしを保ちながら、民藝の理想とする人格を目指そうと励む人が多くいることで、民藝の先達たちの播いた生活文化の種は順調に発育していると感じるとも金光氏は述べています。 確かに私自身、岡山を離れてみると、編んだカゴや、陶器の植木鉢を探そうとしても、なかなか思うようなものが見つからず、岡山にはあんなに色々とあったのにと思うこともあり、いかに民藝が身近な土地に住んでいたかを思い知ることが何度もありました。 以前このブックアドバイザー通信で、世界文化社刊「用の美 柳宗悦コレクション 上・下巻」に掲載されていた、柳宗悦が大正2年(1912年)に東京日本橋・丸善の洋書売場で見つけた「古風で風変わりな英国陶器」というタイトルの洋書を見つけたことがきっかけとなり、バーナード・リーチにスリップウエアの手法を紹介したと書きました。 こ
の日本橋店に6月末から勤務するようになって歴史の重みを感じると共に、民藝運動のきかっけになる種がこの日本橋店にも播かれていたと思うと感慨深いものがあります。 民藝運動の「
手仕事の美しさを生活に取り入れ、心豊かな生活を実践していく」という考えを大切にし、心に潤いという水やりができるような気持ちに余裕のある暮らし方をおこなうことで、
柳宗悦の播いた「民藝」という文化を育て続けることができると思っています。
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観じる民藝
尾久
彰三(
おぎゅう
しんぞう)
世界文化社
定価:¥ 2,520
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民藝とくらしき
金光
章
吉備人出版
定価:¥ 1,500
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わしの眼は十年先が見える―
大原孫三郎の生涯 (
新潮文庫)
城山
三郎
新潮社
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用の美
上巻
柳宗悦コレクション
日本民藝館
世界文化社
定価:¥ 3,990
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用の美
下巻
柳宗悦コレクション
日本民藝館
世界文化社
定価:¥ 3,990
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氏 名:
山地 恭子(ヤマチ キョウコ)
勤務店舗:
日本橋店
書店員歴:
勤続19年。うち、芸術・美術書担当歴9年。
新店オープン、リニューアルで全国の丸善の 美術書を手がけた店舗は15店舗。2001年より ギャラリー担当、2005年より書籍全般と兼任。 2010年6月より日本橋店ギャラリー担当。
最近こっていること:
日本橋店3階の丸善カフェにある「檸檬」のケーキは、梶井基次郎の小説「檸檬」とコラボして生まれたデザート。丸ごとくりぬいたレモンの皮の中に、レモンムースが入っています。レモンの皮を細かく刻んだ甘酸っぱいあたたかいソースをかけていただくと、酸味と甘味があいまった爽やかな風味が楽しめる絶品の美味しさ。レモン大好きの私としては毎日でも食べたいデザートです。北海道牛乳を使った濃厚な味のソフトクリームがたっぷり入ったコーヒーフロートも700円でお得ですョ。
座右の書:
向田邦子「夜中の薔薇」(講談社文庫)収録の 「手袋を探す」、有元利夫「女神たち」(美術出版社)
自己紹介:
今はやりの「フードニング」をはじめました。手はじめにベランダにバジルを植えてみましたが、葉がいっぱい出てきています。うまくいけばトマトや、キュウリや、ナスも植えてみようかと…その前にバジルを枯らさず、パスタに入れて食べられるか心配!
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