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高頭 佐和子(丸の内本店) | « Main

書評~『ああ、なんて素晴らしい!』 ジェットコースターのような物語(丸の内本店・高頭)

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ああ、なんて素晴らしい!
ショーン・ウィルシー/著 坂野由紀子/ 翻訳
ISBN
978-4-10-506141-8 4105061410
出版社:新潮社
刊行日:200912
税込定価:2,940

  人は善良な大人になると、どういうわけか「オレも昔は悪くてさー」をという自慢話をしたがるものではないかと思います。最近は日本でも有名タレントが、過去のやんちゃぶりを小説仕立てで書いた本などが良く売れていますね。最後は立派な大人になる、と思うと、安心して読めることも、人気の秘訣なのでしょうか。
 さて、今回紹介したいのは、そんな日本のやんちゃ小説とは似て非なるアメリカのとある青年の自伝です。現在は、「McSweeney
s」というユニークな文芸雑誌の編集者として活躍する著者・ショーン・ウィルシー氏が、超セレブな生い立ちとものすごく複雑な家庭事情、どん底まで堕ちた青春時代を赤裸々に語っています。
 自己中心的だけど大金持ちの経営者である父親と、平和運動家でワガママで浪費家だけどファンクラブができるほど魅力的な母親、家に出入りする数々の著名人に囲まれた夢のような少年時代を送りますが、両親の離婚をきっかけに歯車が狂い始めます。義理の母親のメロドラマのような嫌がらせを受け、親の愛情に飢えた主人公は、有名校からドロップアウトします。ドラッグ、いじめ、幾度もの転校を経て、とうとう少年院送りになるショーン…。なにやってんだ、ショーン。どうする、ショーン。
 まるでジェットコースターのような物語の展開とユーモアに溢れた文章、あきれるほどのダメぶりと、親の愛情を求める少年の切ない心。読み始めて15分も経つと、先が気になってたまらなくなってきます。そして、このアメリカのセレブな家庭に育った編集者が、懐かしい友人か良く知っている有名タレントのように思えてきて、「がんばれ、ショーン」と思わずつぶやいてしまいました。
 それにしても、日本では全く無名のこの著者の本がなぜ翻訳されたのでしょう?理由は、この本のクライマックスにあります。堕ちるところまで堕ちた主人公が救われる部分で、村上春樹氏の名作『ノルウェイの森』の長い引用があるのです。村上氏もこの自伝を読み、「フィクションじゃないのに、まるでディケンズの書いた物語のように波瀾万丈」「読み終えたときにじんわりと人生の悲しみのようなものが残る」と絶賛しています。ちょっと高い本ですが、読んでいただきたい1冊です。4月に新潮社より刊行予定の『1Q84 BOOK3』(ご予約受付中です!)が待ちきれない、と言う方にもオススメします。

 

ノルウェイの森  
村上 春樹/講談社文庫

 

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氏名:高頭佐和子
勤務店舗:丸の内本店
担当分野と年数:書店員歴13年。昨年より丸の内本店で文芸書を担当しています。
趣味または最近こっていること:休みの日に美術館に行くこと。
大好きなタイトル:須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』
自分を簡単な喩えで紹介:子どもの頃から本が好きで、本屋になりました。単純な人生です。

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