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佐藤 恵(本部) | « Main

書評~『桐島、部活やめるってよ』17歳の不安定な心の揺らぎを感じて切ない・・・(本部・佐藤)

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桐島、部活やめるってよ 

桐島、部活やめるってよ

朝井リョウ/著
ISBN
978-4-08-771335-0
  4087713350
出版社:集英社
刊行日:2010.2
1,260
円(税込定価)

 『桐島、部活やめるってよ』

 時々耳にする言葉に「あの頃はよかったな」というのがあります。「もう一度あの頃に戻りたい」とか「あの頃が一番輝いていた」とか。その「あの頃」の代表格とは高校時代でしょうか。でも私は思うのです。高校時代って、高校時代に限らず青春って、そんなにいいものだったか、と。

 『桐島、部活やめるってよ』は輝ける青春ど真ん中の17歳たちのお話です。5人の男女を主人公としたオムニバス形式の作品となっています。バレー部キャプテン桐島が部活をやめ、それが5人の生活に小さな変化を起こしていきます。何か大きなイベントが起こるわけではありません。この本は「部活」をひとつのキーワードにしており、5人はそれぞれ野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部に所属して日々練習に励んでいるのですが、決して熱血部活小説ではありません。恋愛も友情もすべて日常生活の延長なのです。でもだからこそ読み進めるうちに17歳の不安定な心の揺らぎを確かに感じました。そして思い出しました。
 些細なことでお腹がよじれるほど笑い、人と比べて優越感を覚え劣等感に苦しみ、1100回くらい最高に幸せで1100回くらい不幸のどん底で、そしてなんだかいつも退屈。そうした17歳の空気が文字の間から立ち上ってきて、すごくすごく、切なくなりました。だらけたり格好つけたりしながらも、彼らが何かを決意し受け入れたときの横顔(私の脳内イメージでは横顔なのです)は輝いていて、それがとても羨ましかったです。
 『桐島、部活やめるってよ』で描かれる5人の日常は楽しいことばかりではなく、多分グラフにすると恥ずかしいこと苦しいことの方が高くなるでしょう。やっぱり青春なんてそんなにいいものではない。「輝ける青春」なんて多分おじさんの脳内にしか存在しないものです。それでも青春小説を読んで切なくなるのは、彼らが一瞬だけ見せる美しい横顔にどうしようもなく焦がれてしまうからです。失ったとは思いたくないけれど、何かを得れば何かを失うのが世の常なれば17歳のままでいられるはずもなく、せめて大人の特権としてこの素敵な小説を楽しむばかりです。(17歳には17歳の美しさなど分かるまい!)

補足:青春小説つながりで『船に乗れ!』も素晴らしい小説です。各種メディアで紹介されているのでご存知の方も多いでしょうが。

船に乗れ!    船に乗れ!  船に乗れ!

船に乗れ!
藤谷治/著
ジャイブ
1,680円(税込)

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氏   名  : 佐藤 恵
勤務店舗  : 店舗事業部
担当分野  : 文芸書担当。書店員1年目です。
趣   味   美術館巡り
座右の書   『赤毛のアン』『火車』
自分を簡単に よく物にぶつかります。

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