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インタビュー | 石川直樹さん≪全2回≫ | « Main

インタビュー 石川直樹さん 第2回(最終回)

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石川 直樹(いしかわ なおき)

1977 年東京都生まれ。高校時代にインドを一人で旅して以来、世界中を旅するようになる。2000年に地球縦断プロジェクト「POLE TO POLE」に参加し、北極から南極までを人力で踏破。2001年にはチョモランマに登頂し、世界七大陸最高峰登頂の最年少記録を塗りかえた。2002年早稲田大学卒業。2004年、熱気球による太平洋横断に挑戦。
 
現在、東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程に在学しながら、写真・映像作品を制作。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、行為の経験としての移動、旅などをテーマに、文章・写真作品を発表している。
 
著書に『この地球を受け継ぐ者へ』(講談社)、『いま生きているという冒険』(理論社)ほか、写真集に『POLE TO POLE 極圏をつなぐ風』(中央公論新社)、『NEW DIMENSION』(赤々舎)ほかがある。最新の写真集は『POLAR』(リトルモア)。
石川直樹さん公式サイト

世界最高峰の頂きや酷寒の極地、はては高度8000mを超える天空……。

人間を寄せつけない極限の場所に果敢に挑んできた石川さんですが、その語り口は意外にも思えるほど冷静でおだやかです。

そんな彼のことばのひとつひとつを聞くにつけ、未知の自然への挑戦とは、血湧き肉踊る冒険なのではなく、自分の内面との対峙なのだと気づかされます。

インタビュー2回目は、そんな石川さんに、撮影のスタイルや、今注目している場所などについて伺いました。(インタビュー/文 吉田タカコ)

 

出会いがしらのあいさつのようにして撮る

—石川さんは高校生で初めてインドにいらしたときから写真を撮られていますね。小さいころからカメラには親しんでいらしたんですか?

そうですね。小さいころからみなさんと同じような感じで家族のカメラを使ったりしていました。初めて旅に出たインドにも、コンパクトカメラを持っていって撮影はしていましたね。

それから大学のときに写真の専門学校にも通っていたんです。20歳ぐらいのときですかね。

—世界の名だたる山々や北極へ行くときは、大変な装備が必要ですよね。そこでカメラを常に持っていって撮影をするというのはかなり大変なのではないですか?

カメラは必ず2、3台持っていきます。僕のカメラはそんなに大きくないし。まあ大きくないといってもちょっと重いですけど。

あとは、最後の予備として使い捨てカメラも持っていきます。

あれはけっこういいんですよ。今回の『POLAR』には載っていませんが、『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風』という昔の写真集では、使い捨てカメラで撮った写真を表紙に使用しました。

写真集 『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風』
石川直樹著 中央公論新社刊 税込3,990
 『POLE TO POLE』は2000年、カナダの冒険家が企画した国際プロジェクト。石川さんは世界7か国の同年代の8人とともに9か月かけて北磁極から南極まで、スキー、自転車、カヤックなどの人力で踏破した。

写真集本体の表紙写真は、レンズ付きフィルムで撮影した北極。

—なんと、レンズ付きフィルムで撮った写真が写真集の表紙を飾るとは! 

石川さんは現在も大学院で写真や映像について研究されているとのことですが、写真を撮るときにいつも気をつけていることやこだわっていることというのはありますか?

写真が表現であるとは思っていないんですよ。写真は世界の端的な模写ですし、「表現」から遠く離れて「記録」に徹したときに、写真そのものがもつ力が表出してくるようにも感じています。

人だろうが風景だろうが、自分がいいと思ったものを身体の反応にまかせて撮影して、それを束ねていく。写真集や展覧会というのは、そういった作業の繰り返しですよね。

ぼくは出会いがしらの印象みたいなのを大切にしているんです。出会った瞬間に写真が決まるという感じ。

写真にしろ著作にしろ、自分が驚いたことやいいなと思ったこと、あるいは単なる微細な反応でもいいのですが、自分そのものを伝えられればいいなと思っています。特に強いメッセージというのはありません。主観的なメッセージよりも、客観的な描写のほうが力をもつことも多いんじゃないかと思ったり。

—「POLE TO POLE」プロジェクトでのエピソードで、とても印象に残っているものがあります。

南極のベースキャンプとなるパトリオットヒルズという場所に夏のあいだだけ張られるテントのひとつに、いつの間にか各国の遠征隊が持ち寄った本が集まり、小さな図書館になったというくだりです。

そこで特に印象に残った本はありますか?

世界中の様々な言葉で書かれた本が置いてあったのですごく楽しかったですね。

南極みたいなところで、たとえば村上春樹さんの本とか、ロバート・A・ハインラインのSF小説なんかが置いてあること自体、おもしろかったんです。

あの氷の大陸のちっちゃなテントの中で、都市の日常を描いた小説なんかを読んでいるのが、とても不思議な気持ちでした。

—石川さんにとって理想の本屋さんとは?

ただまんべんなくそろっているというのではなく、そこの書店員さんの好きな本や、これは売りたい!と思っている本が並んでいて、熱意が伝わるようなラインナップを見ると「おっ」と思いますね。

「つまらないけど売れているから入れとくよ」みたいなのじゃなくて、「私はこの本が好きだから置いています!」という本屋さんがやっぱりいいですよね。

 

今この瞬間にいろんな世界があって、いろんな人が生きているということを意識する

—最近注目している場所はありますか? 

沖縄の離島に行きたいですね。波照間島とか与那国島などに行ってみたいです。そこからさらに南に下って、台湾やフィリピンなんかも。

あのあたりの島のつながりに興味があるんです。時間があったらゆっくりフィールドワークをしてみたい。

こないだ1週間ほど西表島と石垣島に行ってきました。今、いろんな島の祭りを取材していて、写真を撮ったり人に話を聞いたりしているんです。

これから時間をかけてまとめていきたいと思っています。

—最後にお尋ねしたいのですが、今、環境の問題や地球温暖化のことがあちこちで叫ばれています。石川さんは北極圏への旅などを通じて、いやがおうにも環境破壊の影響を感じていらっしゃると思うんですが、そのような経験から、これから私たちはどういうことをしていったらいいと思われますか?

今この瞬間にいろんな世界があって、いろんな人が生きているということを、日常のなかで意識していくということですかね。違う場所のことを考えることで、なんだか心がふっと軽くなる瞬間があるんです。

あとは自然への敬意や畏怖の念をもつことでしょうか。これはフィールドに出てみればすぐに感じられると思います。自然と遠い暮らしをしている人も、そうした思いを少しでももつようになれば、世界はほんの少しだけ変わるのかなと思います。

—本日はありがとうございました! 今後の石川さんの活動を心から楽しみにしています。

地球温暖化により溶けだした氷と、神話の時代からそこに暮らす人々。
 
まだ見ぬ土地への憧れとカメラを携え、世界中を彼独自の方法で切り取ってきた写真家・石川直樹。世界地図を眺めただけでは見えてこない北極圏、10年間の旅の軌跡。

POLAR
写真・文/石川直樹
リトルモア刊 税込3,045

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