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若月まり子さん「妖精のいるところ」 第6回

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人形作家若月まり子さんの作品を12回にわたって先生ご自身にご紹介いただきます。

若月まり子(わかつきまりこ) 人形作家。
1982
年 エコール・ド・シモンにて四谷シモンに人形制作を学ぶ。

1993 年 長野県松本市で開催された「信州博覧会」三協精機館にてオートマタ(自動人形)の妖精人形を多用したジオラマ〈森の妖精〉を制作出品。

1997 年 岡山県倉敷市・倉敷チボリ公園のオルゴールハウスに依頼され、オートマタ〈人魚姫〉制作。

1998 2月 東京・大丸、大丸ミュージアムにて開かれた「妖精の世界展」に90体におよぶ妖精人形で構成したジオラマ〈夏の夜の夢〉と等身大球体関節による桐塑・石塑人形の〈廃墟の庭園の妖精〉の2点の作品を制作出品。

2007 7月 うつのみや妖精ミュージアム開館記念「若月まり子展」開催。毎年百貨店等で個展を開催。

現在、作品制作のほかに妖精画の制作など多面的に活動を展開中。

若月まり子さんのオフィシャル・ウェブサイト アトリエ・ラ・リュンヌ「クロニクル」


吟遊詩人トーマス

エレン・カシュナー著

「吟遊詩人トーマス」
エレン・カシュナー 著
ハヤカワ文庫

丘の上に現れた光るもの……それはトーマスのもとに近づいて来る白い馬に乗った貴婦人。泡立つ馬のたてがみと手綱には何十もの銀の鈴。

若葉のような緑色のガウン。長くほどいた髪は朝日のように輝き、その髪にふちどられた顔は名状しがたい美しさなのでした。

「まことのトーマス、この謎をお解き。そなたが日ごと夜ごと歌い、言葉にするものは何か。まことの愛、勇者の心、栄光、悲しみ、魅惑……」

妖精の女王はさらさらと絹の音をたてながら彼の腕にすべり込んだのです。

「私といっしょに来るのです。そなたの身体は7年間は私のもの……」

 

歴史に残るすばらしい作品を残した詩人や音楽家たちは一時の間、妖精の国に連れていかれ、この世ではとうてい得ることのできない美の力を授けられてきたといわれています。

そう……妖精たちこそが、彼らの天賦の才能を見抜き、その技にさらなる恩恵を与えるのです。それは美しいものを好む妖精たちの最もたたえるべき仕業といえましょう。

こうして吟遊詩人トーマスも、その美貌と資質ゆえに疾走する女王の馬に乗り、エルフランドへと旅立ったのです。いったい詩人たちは、どのようにしてその才能にさらなる力を授かるのでしょう。

エルフランドの7日間とは人間の世界にとって7年間。

その止められた7年間の時の中でトーマスは女王と愛し合い、歌うこと以外の言葉を禁じられ、女王から投げかけられた謎を解き明かす使命を受けるのです。

謎は白い鳩の姿となって現れ、トーマスの指から滴る血のしずくを欲しがり、それを飲んでは少しずつその奥深い意味を打ち明けていきます。

それは衝撃的な悲しみを秘めてエルフランドをさまよう人間の魂だったのです。トーマスはそうして人の魂の真実を解き明かすことで、自らの真の芸術の世界を見出していきます。

私は吟遊詩人といわれてきた人々にとても深い思いを抱きます。旅から旅へとさすらいながら竪琴やリュートの音にあわせて人々に感動を投げかけ続けてきたその生き方に……。私の作品吟遊詩人「ロラン」は私自身の想いを描いた物語の中の主人公として制作しました。「ロラン」は現代からタイムスリップしたメレアージェルという恋人を愛するリュート弾きです。

若月まり子人形作品『ロラン』
高さ57cm(座った状態) ビスクドール 2004年

若月まり子さんのオフィシャル・ウェブサイト アトリエ・ラ・リュンヌ「クロニクル」