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インタビュー 松任谷正隆さん~職権乱用

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松任谷 正隆(まつとうや まさたか)

1951 年(昭和26年)1119日、東京生まれ。慶應大学(文学部)卒業。20歳頃からプロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド“キャラメル・ママ”“ティン・パン・アレイ”に参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして、多くのアーティストの作品に携わる。
1985
年から20年以上にわたり「CAR GRAPHIC TV」のキャスターを務めるなど、自他共に認める車好き。二玄社『CAR GRAPHIC』の『CGTV』、世界文化社『Mens EX』での『僕の散在日記』、朝日新聞のWebサイト『どらく』等でエッセイも連載中。
著書に『マンタの天ぷら』(二玄社)、「Men'sEX」での連載をまとめた『僕の散財日記』(世界文化社)がある。
他に、TFMGrand Seiko presents松任谷正隆 timeSpace』(毎週日曜日21002155)にレギュラー出演中。
『職権乱用』公式サイト
http://www.nigensha.co.jp/shokken-ranyo/

音楽プロデューサーでありながらモータージャーナリストとしても活躍する松任谷正隆さん。異色のカーエッセイ『職権乱用』の発売日に合わせ、81日(金)に丸の内本店3階にてサイン会がおこなわれました。

サイン会前のひとときに、松任谷さんにお話を伺いました!

(インタビュー・文・写真/吉田タカコ)

この本はトイレの友にしてほしい「マヌケ本」です!

公道を走るのは危ないと思っているので、なるべく走らない(笑)

—今回出された『職権乱用』は、「生活臭濃厚型カーエッセイ」だそうですが、クルマに関する本で、クルマの写真が載っていないというのはかなり異色ですよね。

だって「本」ですからね。

たとえばクルマの雑誌って、僕は写真が8割、文章は2割ぐらいだと思っているけれど、雑誌と同じだったら意味がない。だったらその逆でいこうと思ったんです。

雑誌の場合はリアルな写真を見て文章を読めるけれど、この本は、文章を読んで「こんなものかなあ」って想像させるしかないから。

—とにかく面白くて、読みながら大笑いしました。私はクルマは全然詳しくないんですが、松任谷さんがひとつひとつのクルマを表現する形容詞、たとえば「ぬめぬめした感じ」みたいなことばによって、とてもリアルにそのクルマを想像できました。

「ぬめぬめした感じ」っていうのもいろんな「ぬめぬめ」があって、それを本当に何も知らない人にいかにリアルに伝えるかが重要ですよね。

それはたとえば、それまで食べたことがないものを食べるときに、味を想像する感覚と近いものがあるかもしれない。

そのリアルさを出せるかなあ、というところが、書いていていちばん苦労したところかもしれないですね。

—クルマを知らない人がとても手に取りやすい本ですよね。

そういう書き方の原点は、やはり「Car Graphic」だったんですよ。細かい表現がリアルかリアルじゃないかというところが、僕をこういう道に進ませる最初のきっかけだったと思うんですよね。

—松任谷さんは音楽プロデューサーであると同時に、モータージャーナリストという肩書きもお持ちなわけですが、モータージャーナリストとして苦労されていることはありますか?

モータージャーナリストというもの自体が、ヨーロッパなんかではもっと地位が高い職業だから、僕は“モータージャーナリスト”と言うにはまったくおこがましいと思ってる。「もどき」とつけるぐらいがちょうどいいと思ってるんです。だから、あえて言うならそういうふうに紹介されることが、しんどいといえばしんどいかな。

でも、じゃあ単なるクルマ好きなだけかって言ったらちょっと違う気もする。だから一時、自分の肩書きを一生懸命考えたときがあったんだけど、やっぱりわからないですね。

でも、プロのジャーナリストでないことだけは確か。ジャーナリストの性格をしてないですからね。きっと僕はクルマを作る方が得意なんじゃないかと思いますね。

—肩書きとしては若干違和感はあるけれども、ふだんクルマに乗るのはどんなに疲れていても楽しいということでしょうか。

それが実はそうでもなかったり(笑)。

疲れているときは乗らないし、だいたい公道を走るのは危ないと思っているので、なるべく走らないようにしてますから。

—ええっ、そうなんですか!?

まあ、乗らないといけない仕事もしているので乗るんだけど、自分としては最小限ですね(笑)。

—では、この本はどんな人に読んでほしいですか?

とにかく、トイレで読んでほしいんです。そういう軽い本にしたいと思って書いたから。

—松任谷さんは、お手洗いでけっこう本を読まれる?

必ず読みます。トイレに本がないとダメですね。

—あのう……、こんなこと聞いていいんでしょうか。私はトイレで本を読む習慣がないので、かねてから謎に思っていたんですけど、トイレで本を読むときというのは、ズボンはおろしたまま……?

当然でしょう。

—じゃあ没頭すると、30分とかその状態で読むわけですか?

そうそう。だから、熱中するとそもそもの目的を忘れてしまうわけですよ。

—(笑)!! 用を足す前に本を開いてしまうということ?

まあ、同時にということもあるけれど、途中で本に入り込んでしまうと、やっぱり本分を忘れて30分ぐらい経っちゃうことってありますよね。


笑顔でサインに応じる松任谷さん。左は担当編集者の「ミッチー」こと道田さん。松任谷さんとともに『職権乱用』ブログに日々記事を投稿しています。

サインにはこんないたずら描きが! さすがは「トイレ本」!?

—ずっとトイレを占拠していて、たまにユーミンが「入りたいんだけど!」とノックするなんてことは?

いちおううちはトイレは複数あるので。

—あっ、それはそうですよね! 失礼いたしました。

いやほんとに、トイレは重要な空間ですよ。

僕は「ヘンタイ」語コレクターなんです

—では、松任谷さんと本屋さんのかかわりについてお聞きします。

 本屋さんにはよく行かれますか?

実は、全然!(笑) 

今日久しぶりに来て、紙の匂いっていいなあと思いました。

特に洋書の匂いが好きですね。

—ふだんはamazonなどで購入するんですか?

そうです。ネットでも、実際に本屋に来ても、知らない本を探すときはカンですよね。CDのジャケ買いみたいなもんです。

—丸善丸の内本店の印象はいかがですか?

ここ、理想的じゃないですか。何フロアもあってバリエーション豊かだし、場所的にもおとなな感じで。丸の内ってIQ高そうな気がするよね(笑)。

—よく読まれる本のジャンルは?

あんまり読んでいないんだけど、最近は歴史ものかなあ。第二次大戦とか第一次大戦あたりのものですね。なぜか最近、ちゃんと知りたいと思い立ったので。

—ではこれまで読んだ中でもっとも印象に残っている本を教えてください。

川端康成の『雪国』かな。

なぜかというと、うちの叔母が印刷屋さんで、小さいころに毎年、手帳というかスケジュール帳をもらっていたんだけど、その手帳の最後に、印刷屋さんだから書体のサンプルが載っているわけ。それが「雪国」だった。

「トンネルを抜けると」が一行ごとにだんだん小さい字で書かれてて、「これはなんだろう」と思ったんです。

—ちょっと変わった出会い方ですね。

それが小学校の3年とか4年ぐらいだったかな。でもまじめに本を読んだのは、それが最後かも(笑)。あとは「ドリトル先生」ぐらいかなあ。マンガは今もよく読むんだけどね。ナンセンスなマンガが好きなんです。

好きな漫画家はいっぱいいるけれど、ずっと好きだったのが中川いさみさんの『大人袋』。中川さんのマンガはすごく好きです。

その前は東海林さだおさん。人格形成上にも大きく影響を受けましたよ。

—東海林さだおさんによって形成された人格……。いったいどういう部分ですか?!

今回の本で言えば写真のアイディアとかかな。

—なるほど、たしかに!  もう、嬉々として写っていらっしゃいますよね(笑)。『職権乱用』の期間限定ブログでも、ヘンな写真を撮って載せたり、毎日ものすごい勢いで更新されていますね。


松任谷さんが自ら毎日投稿されているブログには、必ず写真が掲載されています。この日も松任谷さんの傍らにはしっかりデジカメが

本で発信するのとネットで発信するのとはどんな違いがありますか?

やっぱりずいぶん違うメディアですよね。ネットは覗き見的な要素も大きいと思うし。まあ、ブログはけっこう楽しんでやってますよ。

本は、中身としては軽いおバカな本だけれど、作り方としてはCDを作るみたいに作ったんですよ。何度も何度も書き直したし、あとはやっぱり紙に印刷されてきたものは、自分でパソコンに向かって書いているのと違いますからね。

それは音楽でいうところのミックスみたいなものだから、あとからずいぶんいろんなところをばっさりカットしたり、最後までじたばたしましたね。

実はある有名な方に「将来は文章を書いてる」って言われて、「そうかー、音楽やってないんだー」ってショックを受けたんです(笑)。

でも今、あれこれ書いているのもちょうどいい距離かもしれないなと思ってるんですよ。だって、この本書いているときに楽器が弾きたくて弾きたくてしょうがなかったからね(笑)。

—これから先、ちょっと「おふざけ系」でやりたいことはありますか?

もう、すべてにおいて「おふざけ系」でやりたいですよね。シリアスにやるのは僕は性に合わないんです。

実は僕、いろんな国の「変態」っていうことばの言い方をコレクションしているんだけどね。

「変態」は英語で“pervert”、それがフランス語だと“ペルベール”、韓国語では“ピョンテ”、中国語では“ピェンタイ”、スウェーデン語では“スヌースク”って言う。こないだチベット語の言い方も聞いたんだけど、今ちょっと忘れちゃった。

—ま、松任谷さん、まさかそれはいろんな国で「私はヘンタイです」って言うためとか……!?

いやあ、「ヘンタイ」ってマジなヘンタイは怖いじゃないですか。でも「ヘンタイ」っていうことばが持つ軽さとか間抜けさが好きなんですよ。今回の本で目指したのは「間抜けな本」ですから。

でもこの「ヘンタイ」のニュアンスとか、このインタビューが実際原稿になったらわかってもらえないだろうなあ〜。

—いやいや、『職権乱用』の写真といい、ブログといい、読者のみなさんには十二分に伝わっていると思いますよ!(笑) 今日はどうもありがとうございました!!

サイン会で特典として配られたステッカー。イラストが激似! ともっぱらのウワサです。

職権乱用  
松任谷正隆 著 二玄社 刊
1,680
円(税込)
ノーガキたれるばかりが自動車評論じゃない、専門用語を弄ぶばかりが
自動車評論じゃない。「サルにもわかるインプレッション」を目指して
松任谷正隆が書き下ろした初めてのカーエッセイ。

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