|
-早速、『何をやってもダメだった私が、教わったこと。気づいたこと。実行したこと。』について伺います。これまでの著書とちょっとテイストが違うんですが、どんな読者を想定しながらお書きになりましたでしょうか。
本書は、ビジネス社会で成功するために欠かせない、ビジネス基礎力について書いた本です。ビジネス基礎力とは具体的には、「ビジネス思考スキル」、「コミュニケーションスキル」、「事業プランの立案作成のスキル」、「マーケティング」、そして、「プロフェッショナル資質」の五つのことです。この五つは、ビジネスシーンで活躍して認められて、夢をかなえるためには欠かせない土台になるものです。この基礎力を身につけたい方というのが、本書の読者のターゲットです。
ですから、年代や男女にかかわらず、とにかくビジネス基礎力が足りてないというような、スキルが必要なのは分かっているけれども、なかなか勉強できてないと思われていらっしゃる方に向けた本です。
ビジネス基礎力って、必要なことは分かっていても、なかなか勉強しづらい分野なんです。なぜかというと、基本的には日々の仕事の経験や人との交わりを通して、「あ、こういうことなのか、こういう要領で考えればいいのか、こんな塩梅でやればいいのか」と気づきを得ていくうちに自然と身に付いていくものですから、独学だと学びづらいんです。仕事の経験や人との交わりなしに独学で学んでいこうと強行することもできるにはできるんですが、そうすると、何倍も難しくなってしまいます。そのために結局身に付きません。けれど、身に付いていないと仕事していく上では相当ディスアドバンテージになるという厄介なものなんです。
だから、ビジネス基礎力を身につけていくために、どうしても欠かせない経験や人との交わりというものを疑似体験できるように書いたビジネス基礎力の本があったら、皆さん、助かるんじゃないかと、ストーリー形式や会話方式で書くことによって、読者の方が楽しみながらリラックスしてビジネス基礎力をつけていただければ嬉しいなと、そう考えて本書を書き上げました。
-奥付の前のページに「フィクションです」と書いてあって、ビジネス書かはたまた小説かどちらなんでしょうか。
自分的にはビジネス書を小説の形式で書いたつもりです。最初は完全なフィクション、小説でやろうと考えたのですが、いきなり大きい壁にぶつかってしまいました。私はビジネス書を何冊も書いてきましたが、自分が小説家ではないということを忘れていたんですよ。作家の先生のようにゼロからすばらしいストーリーを生み出すということができなかったんです。無謀にもトライしてみて、すぐに悟りました、小説家の先生方ってすごいんだなって。
それで、結局はストーリー創りをあきらめて、自分の経験をさらけだすことに方向転換したんです。本書の「まえがき」にも書きましたが、実は私自身がビジネス基礎力を身につけてから起業した訳ではないんです。でも、起業したら必須だった。土台の力ですから。けれど私は全くといっていいほど、何の力も備えないまま勢いで起業してしまった。当然の結果として、鳴かず飛ばずの時期を2年以上も過ごす羽目に陥ったんです。
私はもともと地方のサラリーマン家庭で育ち、卒業した学校も一応名前は知られていますが超有名といえる大学でもないですし、英語もダメ、これといった資格もないです。しかもキャリアも中途半端な「自分探し系」。あるのは自己実現願望だけだったんですよ。そんなただでさえ不利な状況なのに、ビジネス基礎力もろくに身につけなかったものですから、希望に胸をふくらませて一歩を踏み出して起業したものの、現実の壁は相当大きいものでした。
そんな状況から何とか壁を突破して、会社をこうして10年近く長らえさせることができるようになったのも、自分自身がビジネス基礎力の存在を知って、心を入れ換えてトレーニングに取り組んだからです。そして自分でストーリーをこしらえることができない以上は、そのトレーニングの日々をベースに書くしかないな、となりました。といっても、ダメダメ状態の自分をさらけ出してしまうのもかなり恥ずかしい気がして相当迷ったんですよね、という裏話も、今日の新刊記念セミナーで披露しようかなって思っています。
それで、それしか選択肢がなかったので、思い切って書いてみたのですが、そうなると、実際の人や会社が登場人物になってしまいます。さすがに本名を出すのがはばかられるような話もあって、そこで全てイニシャルで統一するようにして、なるべく場所もぼかして書くようにしました。また、たくさんの方から多くを教わってきましたが、ページ数の関係で全員のエピソードを出せるわけではありませんから、一人のキャラクターに代弁させている場合もあります。そういった諸々の事情から、フィクションとしました。
-ビジネス書というより、『沈まぬ太陽』のようなモデル小説と言ってもいいのかも知れませんね
これを書き終わった後に、それこそ山崎豊子先生や平岩弓枝先生の小説を読みまくっています。先生方はゼロからストーリーを構築され、しかもリアリティがあって、「ああ、これが筆力というものなんだ」って感心しています。今回、創作にトライして、結局それができなかったから、なおさら刺激を受けて、今、遅ればせながら、まず読むことで勉強しています。いつかはビジネス系の話をゼロからストーリーに仕立てて、例えば、女子高生とか女子大生が主人公でといった、ストーリー仕立てでやってみたいとの野心も芽生えています。
-この本の中ではご主人の存在というのが非常に大きな役割を担っていますよね。最初は飄々とした感じなんですが、ズバッ、ズバッと核心をつかれて、渋井さんが怒ったり、へこんだりみたいなことで始まっていますが、実際にこういった会話があったんでしょうか。
そうですね。いまだにある会話なんですよ(笑)。私は「こういうことが大切なのだな」っていう気づきでもすぐに忘れて同じ失敗を繰り返してしまったりするので、相も変わらずよく叱られます。でも、語り口はまさに本書そのままですが、口調は非常に優しい感じなんですよ。柔らかい感じなんですが、言うことは容赦ないです。はっきり言ってくれます。ずっと20年近く銀行の法人融資部門にいたせいもあるのか、口調は優しいですが、言うことは恐ろしく現実的・かつ厳しいタイプですね。今朝もちょっといろんなことを言われて参りました(笑)。
-今は渋井さんのサポート役に徹していらっしゃる。
私が創った会社が、思いがけず規模が大きくなっていって、現在は十数講座、ほかの講師の先生たちによる講座も抱えるようになっていますので、私だけですとやはり手に負えなくなってきてしまいました。結局、彼を2年ぐらいかけて説得したりお願いしたりして、銀行を辞めて会社に入ってもらいました。彼は組織というものが大好きなタイプで、上もいて下もいるという、その微妙なバランスが好きだったので、私の会社のような人数が少ないところに入りたくないといって、始めの頃はかなりの難色を示しました。それでも何とか助けてってお願いして、ようやく会社に入ってもらったんです。
-ご主人がお読みになって、このキャラクターに満足されていましたでしょうか?
ノーコメントでしたね。後になってやっと「僕からの話だけではなく、さまざま人から教えられて、聞いたときにはわかってはいるけど文章には書けなかった事柄がたくさんあったけれど、ようやく10年たって、何とか言葉や文章にできるぐらいの勉強を、あなたもしてきたんだね」という感じで言われました。でも、「本当にいろんな人たちからいろんな経験やいろんな教えを受けてるから、それをきちんと文章化して人にも伝えられるぐらいのボキャブラリーがまだまだ必要だから、今後も頑張って勉強してくれたまえ」みたいなセリフも付け加えられてしまいました。(笑)
-「勉強してくれたまえ」と(笑)。
まだまだ勉強が足りないというか。彼は本当に本が大好きなので、ビジネス書もビジネス理論も小説も読みます。そのせいか、「いろいろな考え方があるけれど、まだまだ経験も知恵も積み上げていく必要のある君のようなアラフォーが、自分の経験だけでものを語るというのは、ちょっとまだ早いんじゃないか」とよく言われます。教えてもらったことや、たくさんの人たちから経験させてもらったことを皆に分かるように、硬い話、難しいビジネスや経済の話を分かりやすく楽しくというのが、今のあなたができることじゃないんですか、とよく言われますね。ちょっとでも“天狗の鼻が伸びた”状態になろうものなら、こうやって直ぐにへし折られてしまうわけですよ(笑)。
-先ほどのお話とかぶるかも知れませんが、この本のポイントは。
ポイントは、ビジネス基礎力って本来ならば、自分の仕事を通して人と関わり合ったり、仕事の失敗とかいろいろな経験をして会得していくものなんです。それを本を通して経験していただきたいと思って書いた本なので、できれば、私の、著者の体験が書いてある部分を、主語をご自身の名前に置き換えて読んでいただきたいと思うんです。
この本はページ数が多い割には2時間ぐらいで読めると言われていますので、その2時間の間で、ご自身がいろいろな方と会って、その方々からご自分が色々と教わっているつもりになっていただきたいです。そうやって読んでいただければ、必ずご自身の中に“気づき”が生まれる。それは本文にある私の気づきとは違ったものになるかも知れませんが、それでいいわけです。その“ご自身の気づき”こそが、本当の財産になります。そして本を通して気づいたことの一つでもいいから、実行していただけたらありがたいなと思います。そうすれば必ず、その人の転機の扉が開かれるからです。
-この本をお作りなるときに、こういった注文をつけたとか、苦労がありましたか。
今回編集を担当していただいたダイヤモンド社の渡辺さんは、私が本を出したばかりのときからお世話になっていますので、教えていただくことばかりなんです。私がリクエストをできるように、もう少し早く成長したいなと思っているぐらいで、渡辺さんに考えていただいて、あれはどうですか、これはどうですかっていうふうに提案していただくことばかりです。
表紙の色が見る角度によって変わるというのも、転機を迎える読者の方に読んでいただきたいので、「あなたのこの先も表紙が示すように、いろんな色になりようがありますよ」というふうに可能性を示しているのかなと私自身はとらえたんです。このように編集者の方が提案してくださったことで、ああ、素敵ですねと感動してしまうだけなので、もう少しリクエストや提案ができるように勉強したいですね。
-本の造りを見たときに、ものすごいお金がかかっているなと感じました。何がすごいかというと、版組の美しさというか、このバランスですね。この組み方のすごさと、あとマーカーが入っているところ、これは1ページつくるのに2個結局、版が要るということです。また、タイトルが手書きであるということもすごく珍しいということと、表紙のタイトルがエンボスになっていて、あと帯も幅が大きいというのは倍のコストがかかるということを考えると、すごいお金がかかっているなと思ったんですが。
もう本当によく編集者の方がやってくださって。ただ、私自身思ったのは、ビジネス書をメインにしている出版社さんだからこそやってくれることだなと感じたんです。いろんな出版社さんがあると思うんですが、ビジネス基礎力なんていうのは硬いですから。でもそういったビジネスの基本のものというのを読者の人に広げていきたいと。読んでくださって、これはビジネスでベーシックだけど、今までは企業内でOJTとかで教えていたものが、今なかなかトレーニング受けてないよねというのを理解してくださいましたし、経験ができなくて困ってる読者の人たちにも役に立つだろうから広めたいというようなことを、営業の方も皆さんおっしゃってくださったりメールをくださって、それがビジネス書を中心に置いてる出版社さんだからこその反応というか、リアクションなのかなというふうに感じました。そういう方々に自分たちが読者に勧めていく上で価値があると思ってもらえるような本をつくっていかなきゃいけないし、勉強していかなきゃいけないなというふうに、今回の本を通して私も改めて背筋が伸びた思いがしました。
-紙の手触りもいいです。久しぶりに触って気持ちいい本に出会いました。では、全然違う話なんですが、今年実現したいことは何かありますか。もう半月経ってしまったんですが。今年これをやろうと心に決めたこととか。
会社が忙しくて本を書いていなかった時期が2年ぐらいあって、やっと去年書き出して。でも去年も2作で、1作が新版(『日経新聞読みこなし隊』)で、書下ろしは本書だけだったんです。今年は4冊書下ろしを絶対書くと決めていて、それでもちょっと少ない気もするんですが、ひとつは年末年始にがんばって、もう原稿を提出しました。
あとは、自分自身、何の専門家なんですかって聞かれるときがあるのですが、やはり経済やビジネスについての硬くて難しい分野を、楽しく、わかりやすく伝えていく専門家だと自負しているんです。自分がそうした専門家としてこうやっていくんだ、というのをもう一度確認する意味も込めて、皆が知りたいんだけども難しそうなビジネスの理論だとか、ビジネスのスキルだとか、ビジネス処世術、そういったものをわかりやすく、楽しく勉強できるような面白い切り口の本を出していきたいなと思っています。今、プロットを考えているんですが、例えば世界名作で学ぶビジネス処世術とか、とにかく硬いものを皆が分かりやすく楽しく学べるような役に立つ本を、最低4冊は書きたいと思っています。
-最後、読者へのメッセージなんですが、その前に、この本の中の233ページ、「日経新聞読みこなし隊みたいな本を書いたらいいんじゃないか」というシーンがあります。時間的に前と後ろが逆転しているようなつくりの映画がありまして、それは「インファナル・アフェア」であったり、「ゴッド・ファーザー」や「スターウォーズ」もそうなんですが、それが頭に浮かんでしまいました。こんな背景があったなんて、『日経新聞読みこなし隊』からは全然想像もつかなかったので、これはちょっと面白いと思いました。
本書を読んでいただいた後に、『日経新聞読みこなし隊』や、決算書の本、さらに「チャンスがやってくる15の習慣」などのスキル系の本をもう一回読んでいただくと、「あっ、こういうことなんだ」というふうに、他の3冊について今まで以上に理解がより深まると思います。再度読み直していただくきっかけとか、他の私の著書を新たに手に取っていただくきっかけになるとうれしいなと、今のお話を伺っていて思いました。
-では、最後に、読者へのメッセージをお願いできたらと思います。
やはりビジネス基礎力ですね。今どうしてもビジネスの環境も厳しくなってきて、個々人の持っている能力や才能や可能性というものを最大限発揮していくことが求められていると思うんです。それは仕事に求められるクオリティとか、レベルが上がっていくことだと思うんですが、一見厳しそうに見えて、実はチャンスだと思うんです。
ただ、ご自身の能力や才能とか可能性を引き出すためには、そのためのベースとなる力がなければ、せっかくの能力もチャンスも生かすことができません。もし今うまくいかないなとか、どうしたらいいのかなとか、チャレンジしたいんだけど思うようにいかないという方々は、まず自分の能力や才能が足りないと思わずに、それを発揮させていくための基礎力というものをもう一度見直していただきたいです。足りない部分があったらそのスキルを身に付けていただければ、ご自身の能力の可能性をフルに発揮できますし、その結果が成功であり成果だと思いますので、そのときのサポートとして本書を活用して、疑似体験をして、手っ取り早く効率的に基礎力をつけてくださいね。
-ありがとうございました。
ありがとうございました。
|